I'm not nameless.

吉澤閑也くんとギターロック

sumika「Chime」

sumikaの新譜をフラゲ出来たのっていつぶりでしょうか(ダメなファン)。

以前より、sumikaの新譜購入後には感想文を投稿するのが恒例である私ですが、はてなブログで書くのは今回が初めてです。Amebaアカウントを消す予定なので、過去の感想文は折を見てこちらに移すつもりでいます。その際は、是非そちらも。
ちなみにこれを書いている今はFictionのときの己のブログを見返し、「片岡健太と小川貴之の曲は静であり、不変と安心と不浄である」というくだりでめちゃくちゃ笑ってます。なにそれ。


このブログをまともに読むような奇特な人間にはバレているかもしれませんが、私は前回のシングルの感想だけは書き記していません。それどころか、インスタグラムに購入記録すらつけていません。
そもそもsumika自体、冬にちょこっと聴いただけであとはさっぱりです。
しかしながらそれは、単に私がsumikaを常用できるほど明るい人間ではなく、そんな私のよりどころがたまたま下北系ギターロックであるにすぎない、ということについては昨年のFiction e.pの時点である程度思い知りました。
ただソニーミュージックの傘下に入ってからは*1やけにタイアップが多く、楽曲やパフォーマンスとは何ら関係ない場所で摩耗していたのもまた事実。

そんな前提を踏まえたうえで、以下お読みいただければと思います。ネタバレ多め。






1.10時の方角

サビの感じから、なんとなくフィクションと地続きなように感じました。ストリングスのアレンジャーさんが同じなんですね。

転調こそないものの、リード曲だけあって、片岡健太「節」がそこかしこに効いてるなって思いました。
この手の曲は「健太さんが書いたな」って一発で分かる所が好きです。引き出しの数が多いしその中身も惜しみなく使う人なのに、絶対帰り着く場所があって、さらにその曲たちが雛形をかたどったように同じになったりしないところが才能すぎる。なんなら一周回ってちょっと嫌だなとすら。

引く手はナシ
汚れ傷アリ

事実であるかはともかく、こんなわざわざ言語化しなくても許されそうなことまで言っちゃう。
彼の描くそんな主人公が、私はどうにも愛おしく感じます。

丁度うちの妹が中学に進学するタイミングなので、何の説明もなくこの曲をヤツのウォークマンに入れておきたいですね。春から新生活を送る全人類聴いて欲しい。

2.ファンファーレ

モンバスで初めてこの曲を聴いたとき*2が、私の平成最後の夏で一番輝いた瞬間かも知れない。次点で、「モンバスSUPER BEAVER"秘密"のイントロを合唱してる時にトンボが空を横切った瞬間」。いいですよね、夏の終わりって。

私はこんなにも澄んだ、夏の太陽光をルーペで集めたような、そしてその光によって何かを焦がしてしまうような夏を送れない人種ですが、だからこそ知らない誰かの夏を勝手に覗き見ているような気持ちになれて好きな曲です。

正直この曲がTVで頻繁に演奏され、「代表曲」として扱われることは少しだけ悲しかった。ファンファーレに限らずsumikaの曲はどれも等しくいい曲なのに、話題性の大きさのみで外部の人からは優劣…じゃないけど、分け隔てされているような気持ちになったからです。いかんせん初出がシングルでしたし、仕方のないことではあるんですけどね。

このアルバムで聴いてようやく、その感覚から解放された気がしています。

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3.フィクション

1年って早いですね。

…今でも思うところはあるんですよ。話の腰が折れるので、多くは語りませんが。
ただ、さすがに1年も経つと心の平穏が戻ってきました。いまはすごく楽しい、この曲を聴くのが。

歌詞のほとんどの部分は言葉がしっかり詰め込まれているのに、サビではまるでそれらを風船か何かに括り付けて春風に預けるような、そんな感じがします。前にも書いた気がしますね、こんなこと。これ以上以前の言葉を焼き回すのは嫌なので、次の曲へ参りたいと思います。
そろそろ、春がやってくるね。

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4.Monday

おがりん曲…!Fiction e.p.におがりん曲がないの、結構寂しかったんですよ。嬉しいなあ。

イントロのピアノがとっても可愛い。それでもお洒落コード多用に気怠い歌詞に、一筋縄でいかない感じフルコンボなのが素敵。何より、この詞の内容で月曜日なのがニクイよなって。
「二人だけの秘密ね」を女性のコーラスの方(というかNona*ちゃん)に割り振ってるところも好きです。その歌詞をカッコで囲まないのもまた然り。
終始片岡健太が自分の歌のうまさを語ってるような曲だなって思いました。半音上げ・半音下げが隣り合ったメロディ*3がずば抜けて上手い人って、特筆すべきレベルの声の良さを誇ることが多いですよね。(shepherdをチラ見しながら)

結びが最高。人間ってつくづく愚かでオモロイ生き物ですな。

5.ホワイトマーチ

ネタバレを死守してよかった!!この曲もクレジットを見て大騒ぎしたうちの1曲です。

ただでさえ雪が降らない地域に住んでいるうえ今年は暖冬だったので、この曲の情景を思い浮かべるのはどうにも難しいのですが。
さながら春夏を描くかのように多い音数というわけでもなく、かといってあえて寒さを噛み締めさせるほど淋しくもなく*4、銀世界の描写の匙加減が絶妙だな、と感じました。冬の新定番。JRさまさまですね。おかげでチケットは取りにくくなりそうだけど。

この曲を聴く土台として、ウインタースポーツの一つや二つ冬にやっとけばよかったと思ったり、思わなかったりです。
やったらやったで骨折とかしでかすんでしょうけれども。

昨年「いいのに」で「この曲は冬に聴きたかった」「次回からは先行配信を導入してほしい」と嘆願した(?)甲斐あって、*5この曲は先行配信されたわけですが、そもそもアルバムまでのネタバレを徹底的に嫌う私には関係ない話だったのでした。
本当にありがとうございました。 完

6.Strawberry Fields

吹奏楽部入部と時を同じくしてスウィングガールズにのめり込んだ小学3年生の女の子が、この曲を聴いて大喜びしているのが分かりました。

ベースがかっこよすぎる。
でもって、メンバー全員が「引き算の美学」を熟知しているのだと、改めて思い知らされましたね…。

各パートのソロ、マジのアドリブだそうで。
私ごとで恐縮なんですが、最近セッションイベントに参加する機会があり、サックスを担いで挑むも己のフレーズの引き出しの少なさに愕然としたばかりでして。
一介の素人と彼らを同列に考えるのは失礼だと思いつつ、さすがプロは桁が違うわ、と噛み締めざるを得なかった次第です。

ライヴではどうなるんだろう?ツアーで演らないアルバム曲もあることは身を以て知っていますが、今回はそうでないことを願いたいなあ。もしライヴで演ってくれるのであれば、それぞれのソロ部分は音源通りなのか、その日限りのガチアドリブなのか、それも楽しみです。

7.秘密

キミスイのサントラを買うつもりはなくて、にも関わらず未発表曲を収録してくるとはなんたる阿漕な商売!と思ってたらちゃんとアルバムに入ってました。*6勝利。製作委員会の皆さまにお詫びを申し上げます。

映画館の音響で聴くと気持ち良さそうな曲ですね〜!だからどこか小さい映画館を借りきって、このアルバムを通しで聴く会やりたいです。泣く気しかしない。

本当にアホの感想で申し訳ないんですが、私はこの曲を「”秘密”という言葉そのもののキャラソン」と思っています。
秘密、という言葉にまつわるストーリーではなく、言葉そのものを歌ったかのような。…このように説明すると大変グダつきますので、上のカギカッコが私の中でのすべてです。ごめん。

「夏」という言葉が何度か登場しますが、今の時期にジャストフィットな曲だと思ってます。もう少し暖かくなったらどこかの学校の近くまで散歩して、散った桜の花びらを数えながらこの曲を聴くんだ。今決めました。私に似合うような春ではないけど、たぶん罰は当たらないだろうし。

8.春夏秋冬

春の描写が晴れ空や桜とともにあるそれではなく、ブルーグレイの空の下のどこか物悲しい風景なのがたまらない…。それ以外の季節が鮮やかな思い出とともにあると分かるから、尚更そう思います。私は未読なんですが「君の膵臓をたべたい」自体がそういうお話なのかな。

私はあまり手放しで幸せと言えない結末を迎える小説が大好きでして。(三秋縋「君の話」とか中島らも「恋するΩ病」とか)
この曲は前向きな言葉で終わっている(と、少なくとも私自身は感じている)し、ラストでの転調によって曲に陽の光は射しているのに、この手の小説の読後感と同じような感覚を覚えるのです。

しかしこうやって考えると、季節の移り変わりってものは、言い知れぬ寂しさに溢れているんですね。
私は冬の最後の日が好き。カフカの「Hempel and clows」とか聴いちゃいます。本当はそこで春夏秋冬を聴くべきなんだろうけど、寒い季節は徹底的に寂しくなりたい人種なので。

9.Hummingbird's Port(instrumental)

以前Familiaに収録された「ピカソからの宅急便」を聴いたとき「トムジェリが始まったかと思った」などと宣った私めですが、今回のインストを聴いた際真っ先に思ったのが「おジャ魔女どれみアイキャッチBGMかと思った」でした。

生きててすみません。

10.Flower

このアルバムで、というよりも下手したらsumikaの全楽曲でもトップクラスに好きかも知れない。

この曲を聴いてなんとなく、原点回帰したな?って思っています。とは言ってもその「原点」をリアルタイムで見ていたわけではないので、新規の分際でと火あぶりにされるかもしれないですがそれでも思っちゃったから仕方がない。Vital apartmentの頃の匂いがしたのです。

だめだー、あんまりいろいろ書く気になれない。好きなんですもの。あれこれ書くとかえって無粋な気がする。(趣旨)

しかし健太さんは武器いっぱいもってますよね。メタフィクション的な歌詞とか。この曲も若干その感じがします。

11.ペルソナ・プロムナード

某誌にて「半ギレのスカチューン」呼ばわりされていたのは、よくわかんないけど超面白かったです。

絶望的に耳コピしにくい混沌さとめちゃくちゃなキャッチーさって両立するんですね、な曲。なんでこの曲がノンタイアップなのか疑問ですよ。他のバンドだったらシングルカットしてても可笑しくないのに彼らはそうしない。そこが好きなんですけどね。

最初に聴いたときはかなり混乱したことを覚えてる。詳しくは過去記事をご覧あれ。

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12.あの手、この手

sumikaがアルバム曲にゲストボーカルを入れるらしい、そしてそれが吉澤嘉代子さんらしいと知ったときは結構驚いたんですが、なんだかんだ「かなり親和性は高そうだな」とは思っていまして。
蓋開けたら期待をバッチリ超えられていましたね。…って言うしかない状態にさせられるから、毎度ちょっと悔しいのですよ。

視点が変わるからといって2部構成みたいな区切り方をする曲を、私は初めて聴きました。新鮮。嘉代子ちゃんがマイクをとったまま健太さんに戻ってこないところも含め、とても新鮮に感じました。少なくとも私が想像していたゲストボーカルとは違った。
あと2番の歌詞に関する健太さん御本人の見解がとても好きです。女の子には勝てないなって思う瞬間、あるよなあ。…あ、私も女です。一応。

しかし嘉代子ちゃんの声はいいなあ…自分の声に関するコンプレックスを刺激されるから、女性アーティストをあまりたくさん聴かないっていうのは確実にあるんですよ。失礼に当たるかもしれない発言だけれど、彼女みたいな素敵な声の人でも、そういうコンプレックスを抱いたことってあるのだろうか。声が好きだなって思う人に対して、いつも思ってしまうことです。

13.ゴーストライター

バロンさんがこの曲から手を引いたときのお話がとても素敵だと思いました。昨年のツアーでピアノと歌のみのコーナーがありましたが*7、なるほど確かにバンドセクションじゃなくてもちゃんとsumika。すごいなあ。
あと弦楽器の中ではチェロが特に大好きなので、そういう意味でも大変おいしゅうございます。

歌の幕開けと、終わりの詞がめちゃくちゃグッときました。
つまりは愛情ってこういうことなんでしょうね。アルバムを2周3周しながら、この「ゴーストライター」というタイトルが意味するものを噛み締めています。「中四国でいちばん読解力がない」でお馴染みの私ですから、その解釈は大幅にズレているかもしれないですけれど。
この曲で描かれる思いを誰に向けるかは人によって違うのでしょうが、私にとってその相手は家族です。面と向かっては絶対に言えないけどね、でもいつも心配をかけてる相手ですから。

後世に語り継がれるべき曲だと思っています。でも、この先にとんでもない化け物が待っていた。

14.Familia

どうしても言いたいことがひとつあって、それが「これ隠しトラックにすればよかったのに」っていう。もしくはボーナストラック。
すごくカーテンコール的な曲だと思ったし、実際インタビューでもそんな発言を見かけた気がするので、アルバムの本編であることに若干の違和感がありまして。
でも一方で、この曲にちゃんと番号を振らないのはもったいない、と思う自分もいるのです。現に私はFamiliaを聴いて「伝言歌」すら超えるレベルで泣きました。朝の4時でした。これがもし隠しトラックだったら、私は涙腺に異常をきたすレベルで咽び泣いたかもしれません。そうならなくてよかった。

曲の内容自体に触れる必要は最早ないでしょう。

「私のことを扶養に入れてもいいと感じられる殿方の存在」がまずフィクションに感じたので、他の人みたいに「結婚式で使いたい」とは思えなかったです。いろんな意味で残念すぎる話ですね。
ただ私にとって大切な人たちの、けして結婚に限った話ではありませんが、人生が大きく変わるような祝福の瞬間。もしそこに私が居させてもらえるのであれば、私はありあまる喜びをこの曲に力を借りて届けたいと、そう思っています。

あまりにもハッピーな曲だから、ここでエンドマークを打って幸せな瞬間を永久に凍結させたい、と思うのは私の悪い癖だね。そんなことをせずとも、この曲に祝福された二人はきっと最期の瞬間まで幸せでいられる、根拠はないけど何故かそう感じられました。







決して明るい話ではありませんが、書きます。ここまで読んでくれた人は、良かったらこの先も読んでほしい。


これまで私がsumikaのワンマンに足を運んだとき、あけすけに言ってしまえば数日前から何となく気乗りしないことばかりでした。あ、誓って言えるけど、それは彼らが原因になったわけじゃないです。
もう言うのもばかばかしい話ですけど、Familiaツアーのときは人間不信のピークの時期であったし、Starting Caravanのときは自然災害への恐怖があった。(だってネットの人がすぐ南海トラフとか言うから…)
今回も何も起こらないはずがないと思った矢先、KFKが解散を発表しました。

私にとって彼らのライヴはいわば特効薬です。しかし心のどこかで、私は少し怖かった。
「彼らに抱いている感情は愛ではなく、依存や執着なのでは」そう思ったからです。

思うことがあってもなお「彼らから距離をとりたくない」と思ったのは、そのいろいろ混じった感情が私を繋ぎとめたからであり、実際にその感情は私の救いでもありました。それでもカフカが改名したときも同じように「これは愛ではなく執着だ」と感じていて、そしてその寂しさと自己嫌悪を覚えていたから、私はsumikaから早く離れなければと悩んだ。*8
Chimeの発売はその最中でした。

恋の賞味期限は4年だそうです。
Chimeを手に入れてから、私はこのアルバム以外聴いていなくて。なんか、そんな気分になれないんです。さながらファンになりたての自分に戻ったような感覚。
当日までの2週間に何が起こらないとも限らないけど、初めて純粋な「楽しみ!」を胸にライヴが観られそうで、そのことがすごく嬉しい。

sumikaを知って好きになって3年目。丸3年を前にして、もう一度彼らの音楽に恋をし直して、そんなことを繰り返しながら一生過ごしていけたらどれだけ幸せだろう!
苦しみは…できれば避けていきたいけど、アルバム1枚でこれだけ人生が鮮やかに輝くならば、そんなに悪いことじゃないのかもしれません。

いずれにせよ、衝動だけでアンサーパレードを買った私も、初めて曲を聴いて泣いた私も、「私ごときが烏滸がましい」とミュージシャンの夢を捨てた私も間違ってなかったし、今後嘘になることもありません。
それが嬉しくて嬉しくてしょうがない。


なんちゃってね!どうでもいいですよね、私の話なんて。それでもここは私のブログなので、好きなことを書かせていただきますよ。…難しいな、この話題の締め方(笑)

私がいいファンじゃないことなんて全然分かり切っているし、多分この先もいいファンにはなれない。
それでもだ。責任転嫁になってしまうけど、好きにさせたのはsumikaさん、あなた方だから諦めてくれ。

これからも好きでいさせてください。できれば、嫌いになるまで。




おしまいちゃん!!

*1:言い方

*2:私は将棋倒しに巻き込まれなかった民です

*3:この曲で言うと「だらしないのね」の部分

*4:個人的にそういう曲は間に合ってるので

*5:タイアップパワーは言わずもがなですが

*6:結局サントラは買ってません

*7:「ほこり」だったかな

*8:「嫌いになるまで好きでいさせて」が私にとっての真実なのは、そういうネガティブ思考が大きいからかもしれません